ソフトウェア音源の使用とライセンスの関係(Part1)

ソフトウェア音源の使用とライセンスの関係(Part1)

その声は誰のもの?

平沢進(Wikipedia)

敬愛する平沢進先生に関するWikipediaのページ内に、「LOLA」の文字を見つけた。

どうやら、一部楽曲「白虎屋の娘」「確率の丘」の一部にソフトウェア音源が使われているらしい。

先生のようなプロミュージシャンの現場でどのようにソフトウェア音源が使われているのか、知ることが出来た一方で、「使っても良いんだ」と思えた事は個人的に心のハードルを下げてくれたように思える。

というのも、私はミュージシャンの端くれだがボーカルに関しては全くのド素人。

その昔、町外への生徒だけでの外出が校則で禁止されていた頃(そんな時代もあった)、校則を破り友人とカラオケに行った時の事。

「君の歌い方は、正しいけれど上手くない。ボーカルには向いてないな」と言われたことは今でも忘れない。

それが心に引っかかり、今日の今日まで自分の声で歌うことは避けてきた。

とすると、楽曲の発表方法には自然とソフトウェア音源を使うようになった。

ええ、買いましたよ。初音ミクとIA。そのうち、調教にも腕が必要ということも知りました。曲を出す為には創造性だけではない、地道な努力の積み重ねも必要なのだと。

 

 

 

 


ところで、音楽家は誰しも、自分の能力だけでなく「権利」とも戦う存在であると、私は思うのです。

過去に作った曲の一部には、作詞を他者に依頼したものもありました。そういった曲は、今、私の名義だけでは再発表はできず、実質お蔵入りになってしまっています。

思えばあの時は権利に疎かった。とにかく発表できればそれでいい、とばかり考えていました。

今になって思えば、「ああ、もっと生々しい話もしておけばよかった」と思うばかり。

最初に権利関係を明文化して、必要ならお金も支払ってしまえばそれで済んだものの。

今となっては、その作詞者さんとは連絡も取れず。あの歌詞は永久に使えないものとなってしまいました。

曲を発表するPVには、イラストを使った動画を使い、動画を作るために編集者に依頼して(ここもまた契約書なしの口約束…)、もうどこまで使って良いのかいけないのか、簡単には分からない状態に。

 

というわけで、その権利関係、少し整理をしてみようと思いました。


 

デジタル時代はチャンス。だけど権利がややこしい…?

今は様々な企業が、楽曲配信流通サービスを提供してくれています。

各社により手数料や配信に至るまでの手続き・申請内容は違いますが、概ね配信先ストアは同一なように思えます。

(少なくとも、大手(Prime Music , Apple Music , Spotify)は配信先として揃っているので問題ないかなと)

あとは手数料と還元率との兼ね合いでしょうか。

なお私は某、手数料が無料のサービスに2つ登録をしていますが、還元をするとは言っているものの、実際には還元されてないのではと思うときもあります。

(今はSpotifyやApple Musicではミュージシャン登録をしておけば、再生数などはミュージシャンの側で把握できます。ある程度の数、配信はされているのに、いつまで経っても入金の話が来ないのは、どうしてでしょうか)

というわけで、手数料無料のところは今後使いません。

多少、手数料がかかろうとも、安心して配信できるところをこれからは探します。

というわけで色々なサービスを物色していたところ、TuneCoreさん、VOCALOIDの配信にも対応しているとのこと。

「おおっ、これは…」と見てみると気になる一文が。

VOCALOID™利用料

VOCALOID™製品を利用したリリースについては、本サービスの利用規約や当社ウェブサイト内の表記に拘わらず、VOCALOID™利用料として、利用規約第6条に定める販売収益の20%(※1st PLACE株式会社の「IA」及び、ヤマハ株式会社の「VY1V3」、「VY2V3」、「Mew」、「VY1V4」、「CYBER DIVA」、「ZOLA PROJECT」に関しては利用許諾料は頂きませんが、システム利用料として販売収益の5%のみ)を当社にお支払い頂きます。
VOCALOID™利用料を当社が販売収益を管理者アカウントに計上する時(ストアレポートの反映時)に控除するという形でお支払いただきます。

TuneCoreホームページより引用

ふむふむ。つまり、20%を収めなくちゃいけないのね。

VOCALOID製品を使った配信には色んなところの許可を取らなきゃいけないから手続きも大変なのね…。

……ん?

VOCALOIDは、とどのつまり、「ソフトウェア音源」。

だから、ある曲を作るときに使ったピアノ音源だとかVSTプラグインだとか、それと変わらないのでは?

ということは、これまで配信してた楽曲も、本来は何かとしらの申請が必要だったのか…?

あれれ、TuneCoreじゃなくてROUTER.FMならVOCALOIDの手数料は必要ないみたい。

(そりゃ、ROUTER.FMの運営会社はクリプトンだから?)

なお、VOCALOIDで発表する音楽の多くが非営利目的であることを考慮して、当該目的でキャラクターを使用する場合、ROUTER.FMではキャラクター利用料をいただいておりません。

https://router.fm/faq/?qid=2&from_index=1より引用

気になりまして、調べてみました。まとめました。

ちなみに私がやりたいのは以下の3点。

  1. 初音ミクのイラストを使う
  2. 初音ミクの合成音声を使う
  3. 1と2を使った音源を、Spotify等の有料配信サービスで配信する

はて、どうなるか…。


キャラクターイラストの権利について

VOCALOIDは、VOCALOIDシステム本体と音声ライブラリの2つから構成されています。

各ソフトメーカーが開発する音源(例えば初音ミクはクリプトン・フューチャー・メディア(株)の販売)を、YAMAHAさんが構築したVOCALOIDというシステムを用いて演奏するとイメージしていただければわかりやすいかと。

今回考えるのは、このうち音声ライブラリの方です。

まずは製品の見た目、イラストから。

右のフローチャートは、クリプトン社が定義する「キャラクター利用のガイドライン」を基に作成したものです。

(このフローチャートではクリプトン社が開発した音声ライブラリのみが対象です。他メーカーの販売分に関してはそれぞれのガイドラインがあるかと思いますのでご注意下さい)


驚いた点

  • 有償利用の場合でも、必要経費の回収を目的とした「必要最小限の対価」という考え方がある。
  • ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)
  • ピアプロリンク

「必要最小限の対価」というのは、例えばCD1枚を作るのに「CD-R ¥50」「ケース・ジャケット ¥50」費用がかかったから、完成品を¥100で販売する事を、クリプトンの承認を得られれば許可するよというもの。

申請はピアプロリンクを介して行うのですが、これがGoogleフォームのように簡単なフォーマットから申請が出来るようで。

認可を受けた後は、認可を受けたことを示すQRコードの表示が義務付けられたりなどの手間はあるものの、簡単に申請ができるのは良い点だと思う。

ではどこまでが「必要最小限の対価」として認められるのかは、判断が様々になりそうな気もしますが。

とは言え、同人文化の継続の為の金銭的負担の所を気にしていただけるのはありがたい所。ありがたく使わせていただきます。

一方で、「非営利目的で対価なし」の場合は申請が不要というのもありがたい。

ガイドラインさえ遵守してくれれば構わないということですね。

一応、作品をアップロード(公開)した段階で、作成者とクリプトンの間で自動的にPCL(契約)を結びますよ、という事らしい。


というわけで私のやりたいこと3つはどうなるかというと…。

  1. 初音ミクのイラストを使う ← イラスト自体は、ガイドラインを遵守すれば大丈夫。
  2. 初音ミクの合成音声を使う ← まだわからない。
  3. 1と2を使った音源を、Spotify等の有料配信サービスで配信する ← 個別申請(汗)

個別申請は、メールでのやり取りになる模様。(やりたくない…)

ROUTER.FMなら、この申請を回避できると考えて良いのかな?

  1. 初音ミクのイラストを使う ← イラスト自体は、ガイドラインを遵守すれば大丈夫。
  2. 初音ミクの合成音声を使う ← まだわからない。
  3. 1と2を使った音源を、Spotify等の有料配信サービスで配信する ← ROUTER.FMなら大丈夫?

合成音声の権利について


上のフローチャートは「初音ミク V4X エンドユーザー使用許諾契約書(クリプトン社発行)」をベースにまとめたものです。


驚いた点

  • イラストと合成音声は、別々に判断する
  • 契約表示がなければ、商用利用も申請なしでOK。
  • 「キャラクターのイメージ」とは?

まず、今回調べて分かったのは、フローチャートが2つ存在するということ。

イラストと合成音声はそれぞれ別に考える、ということですね。

そうか、こうすることで「VOCALOID(初音ミク)」というコンテンツに対して、音楽面とビジュアル面の展開をそれぞれ進められるというメリットがあるのね。

例えば、ボーカロイド(初音ミク)をフューチャーしたアルバムを作ると。ジャケットに初音ミクのイラスト、ボーカルにはfeat.として初音ミクV4Xを使用するとなれば、イラストは「キャラクター利用のガイドライン」、合成音声はこの使用許諾契約書に沿わなければならないということでOK?

 

次に、「契約表示」について。

まず、「VOCALOID」と「初音ミク」はそれぞれ、ヤマハさん・クリプトンさんの登録商標です。

これをアーティスト名等のクレジット部分やプロモーションにおいて使うことの何が問題か…「商標の普通名称化」というWikipediaのページを参照してみました。

商標が普通名称化すると、商標としての機能は失われ、商品や役務に用いても、顧客吸引力をまったく発揮しなくなる。また、その商標が登録されていても、商標権の行使が不能となり、第三者による無断利用を排除することができない。その結果、これまでの営業努力によって築きあげられたブランド価値が消失し、その商標を保有していた企業などにとっては大きな損失となる。そのため、周知あるいは著名な商標を保有する企業などは、徹底した「ブランド管理」によって、商標の普通名称化を阻止しようとするのが一般的である。

Wikipedia(商標の普通名称化)より引用

なるほど…、つまり「ブランド」に関わる所が問題ということですね。

ボーカロイドや初音ミクに関しては、それぞれヤマハさん、クリプトンさんが持つ魅力的な商品の一つ。商品名を聞いただけで、どこの会社・メーカーが作っているのか、連想できるようにしておきたいという事ですね。

(過去の例として「エスカレーター」が挙げられていました。エスカレーターはもともとアメリカ・オーチス社の自動階段昇降機として商標登録されていました。でも今、エスカレーターと聞いてオーチス社を思い浮かべることはできますか?私は無理)

そこのブランドに関しては、しっかり管理をしておきたいから、必ず問い合わせをしてくれと。

逆に言えば、「初音ミク」「巡音ルカ」「VOCALOID」などの商標登録されている言葉を、ジャケットやクレジットの表記に使わなければ問題はない、と解釈できそうです。

 

最後に、「キャラクターのイメージ」ですね。

これはそもそもの禁止事項に該当する事で、キャラクターのイメージを著しく損なう利用に関しては禁止事項に該当すると。

利用方法については種類を問わずとなっているので、あらゆる可能性が想定されます。

「歌わせた歌詞」「ジャケットとしたイラスト」「PV内でのモーション」「プロモーション用の文言」、場合によっては「合成音声の歌わせ方」とかも対象になりうるかもしれません…。

(ここまで来るともう感じ方次第というか、判断する人次第になってくるので、実際に法的手段に打って出る可能性は低そうですが。キャラクターそのものに踏み込んだ話となると本題からはそれますので、ここはまた後日触れたいと思います)


 

と、もう一つ。

気になった文言の一つに、「本製品を正規に新品として購入した方」という文言がありました。

つまり、「非正規」ルートで購入したり、「中古品」として購入したり、購入ではなく「貸与(レンタル)」している場合は、本許諾書の対象ではないですよと。

これ実は、結構大きな問題だと思ったり。

実際、初音ミクって高価なものなんです。

クリプトン社のホームページでは、WEB価格として¥17,600(税込)で販売されています。

これ、なかなか手が出る価格ではないですよね。

事実、中古版がオンラインでも出回っていたり、いわゆる「調教師」としてmidiデータと歌詞、マイナスワン音源を受け取り、所定のライブラリ音源を楽曲に合うように作成し、返却する人もいらっしゃるとか。

(確かに、VOCALOIDには他のVST音源等とは異なり、「発音(音階ではなく、子音・母音を指す)コントロールの難しさ」「指定した音階が必ず鳴るとは限らない」等の難しさがついて回ります。その事を考えれば、調教師の需要もあるのかなとは理解します)

ただし、許諾内容の中に書かれたこの一文は、いわゆる正規ユーザーに対しては寛容である一方で、中古・貸与ユーザーに対してはその存在を認めず、認めていないことから作成した合成音声の使用に関しても否認可であると読み取ることが出来ます。

(ただし、所定のライブラリ音源を持っていないとしても、例えば一サークルとして調教師を内輪に組み込めば、この許諾書にも合致するのでは?と考えられなくもないです)

ここに関しては深堀していきたいところですが、深堀すると本題からはそれますので、また後日に。


  1. 初音ミクのイラストを使う ← イラスト自体は、ガイドラインを遵守すれば大丈夫。
  2. 初音ミクの合成音声を使う ← 楽曲クレジットに「初音ミク」や「VOCALOID」と書かなければ、問題なし
  3. 1と2を使った音源を、Spotify等の有料配信サービスで配信する ← ROUTER.FMなら大丈夫?

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